カーナビの相対論効果は嘘
相対論を証明する証拠として、近年カーナビがよく紹介されます。
相対論は誤りだと主張する連中にとって、これは非常にまずいことなので、カーナビは相対論の証明にはならないと主張するサイトが結構あります。
以下のサイトはその一つです。結構参照されているみたいです。
「カーナビの相対論的効果はウソ」 https://woorex.com/03_giji/03_01_05.html
このページの主張を見てすぐわかるのはGPSの送受信器間の距離の1日分の相対論的な補正量を
相対論的補正の効果=(相対論による観測時間の差)×(電波の速度)
≒(0.1秒×4/100億) × 30万Km/秒
≒ 12mm
と見積もっているところでしょう。1日に12mmなら確かに小さいですから、カーナビが正常に動いても相対論の証明にはならないでしょう。しかし式の最初の方に出てくる 0.1秒とはなんでしょうか?
これは衛星の電波が衛星から地表まで届く時間です。本来ここには、一日の時間(86400秒: GPSの制御局の衛星への時刻補正間隔 1日)が入るはずですが、サイトの説明によると
「発信時の時刻と受信時の時刻は連立してるから、累積された時刻の誤差が計測時間にまで大きく影響するなんてことはアリエナイ」
という不思議な説明しかありません。勿論数学的/物理学的な説明は一切なし。
GPSは衛星からカーナビなどの受信機へ信号を送信することで位置を計測します。送信時の時刻を信号に載せて送信し、受信側では送信時の時刻と受信時刻を比べて距離を算出します。つまり、
A=信号の送信時の送信機(衛星)の時計の時刻
B=信号受信時の受信機(カーナビ)の時計の時刻
とすると、時刻差 B-A を測って、衛星と受信機間の距離 (B-A)×光速 を算出します。衛星の時計の時刻のずれはすなわち A のずれなので、衛星の時計の1日分の時刻のずれはそのまま送受信器間の距離( (B-A)×光速 )の誤差に反映されるはずです。
0.1秒とは B-A のことですが、100億分の4は Aの時刻経過に対する誤差を表す割合です。定義上B-Aにかけるための割合ではありません。定義上、最後にAを補正した時刻からの経過時間にかけるべきものなのです。
衛星の時計は地上の制御局から一日1回地上の時計と同期されています。なので一日分蓄積された誤差を採用しなければならないのです。
まあ屁理屈でも何でもよいので 0.1秒 を無理矢理捩じ込めば、誤差は86万分のーになるので都合がよかったのでしょう。
困ったものです。
ついでによくある質問を解説しておきます。
実際のカーナビでは、4個の衛星の信号を使って、受信機側の時計のずれを補正する処理を を行っています。
カーナビのクウォーツの時刻精度はかなり低いので、上の式で示した B が信用できず クウォーツの時刻誤差を見積もらないと測位の精度がメチャメチャになってしまうからです。
原理は簡単で、3個の衛星からの正確な距離が求まれば、受信機の3次元の位置(x, y, z 座標、あるいは緯度、経度、高度) つまり3個の未知数が3個の方程式の連立から求まります。 受信機の時刻誤差も未知数に加えると未知数が4個になりますから 解くには4個の方程式が必要にです。つまり、4個の衛星からの信号があれば、受信機の時刻誤差と3次元の位置が求まるのです。方程式は解析的には解けないので、ニュートン法によって数値的に解きます。
この処理を行うと、衛星間の相対的な時計の誤差が測位誤差になり、共通の時刻誤差は測位誤差に現れないことに なります。もし共通の時刻誤差が有ると、クォーツの時刻誤差と一緒になって消えてしまうからです。 つまり、相対論的誤差が全ての衛星の同じ量の時刻誤差となって現れるなら、相対論的な時刻誤差が有ってもなくても測位には影響しないことになります。
現実にはそうは問屋が卸しません。衛星の一日一回の地上との時刻合わせのタイミングは衛星毎に異なります。
衛星の時刻補正量 = (現在時刻 - 最後に地上と時計を同期した時刻) x 相対論的な補正係数
なので、時刻補正量は衛星毎に異なるのです。
つまり GPS は相対論の正しさを証明しています。