複素数の表し方

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正しい複素数の表記法

ここまで、複素数を2次元ベクトルだと強調したかったので、ベクトル表現で解説を進めてきましたが そろそろ正しい表現に切り替えましょう。

正しい表現といっても、巷の複素数の表し方には大きく2種類、細かくは3種類あります。


1. 数学や物理で最も広く使われているあらわしかた

 (a, b) = a+bi  

iは悪名高き虚数で、b がベクトルの2番目の値であることを表しています。


2. 数学や物理で最も広く使われているあらわしかたのちょっと変形

 (a, b) = a+ib  

虚数 ib の前に来ただけですが、たまに見かけます。

 \cos\theta +\sin\theta i  

のように i を後置すると具合が悪いケースではこちらの形式

 \cos\theta +i\sin\theta  

とすることが多いようです。


3. 電気工学ではこれ

 (a, b) = a+jb  

電気工学では小文字のiが電流を意味するのでこうなったようです。j は必ず前置します。


ここでは 1、又は2の表し方を採用します。

虚数を使って複素数の乗算と除算を導く

この書き方を採用すると、i^2=-1 であることを 利用すると、複素数の掛算と割算の定義式を覚えなくてよくなります。何故かというと


\begin{array} {ll}
  (a+bi)(c+di) &= ac + bdi^2 + adi+bci \\ 
                &= (ac-bd) + (ad+bc)i
\end{array}
 

\begin{array} {ll}
  \dfrac{a+bi}{c+di} &= \dfrac{(a+bi)(c-di)}{(c+di)(c-di)} \\ 
                &= \dfrac{(ac-bdi^2+bci-adi)}{c^2-d^2i^2} \\
                &= \dfrac{ac+bd}{c^2+d^2} + \dfrac{bc-ad}{c^2+d^2}i
\end{array}
 

と今まで紹介してきた諸法則と i^2=-1 を使えば機械的に導けるからです。

ほら、やっぱり怪しげな計算を使っているじゃないかと言われるかもしれませんが、 元は怪しげなものの、これは定義式だと考えて出自は無視しましょう。複素数の乗算と除算には魔法のような 不思議な能力があるので、そんなことはどうでもよいのです(^^;

複素数のもう一つの表し方と複素数の絶対値

もうひとつ複素数の表記方法を紹介しましょう。大きさと角度を使う方法です。

複素数001.png

いうまでもなく、2次元ベクトルは大きさと方向を持ちます。複素数は、上図のように複素平面での2次元の座標として 表すことができます。

その原点からの距離 r と実軸となす角度 \theta を使って複素数を

 r\angle\theta  

と表すことができます。これは

 r\cos\theta + ir\sin\theta  

と同じものを表しています。覚えておきましょう。

ちなみに、言うまでもないことですが、ra + bi の複素平面の原点からの距離のなので ピタゴラスの定理から

 r = \sqrt{a^2 + b^2}  

です。これが 複素数の絶対値で、実数の絶対値の書き方にに倣って

  |a+bi| = r = \sqrt{a^2 + b^2}  

というように書きます。

複素共役

このページの締めくくりとして、複素共役を紹介しておきましょう。といっても複素共役とはたわい無いもので

 \overline{a+bi} = a-bi  

が複素共役です。式の上にひかれたオーバーラインが複素共役を表します。結果は式の通りで、複素数の虚数部分(2次元ベクトルの後ろの数字)の符号が変わるだけです。

複素共役は割とあちこちで複素数の計算に顔を出します。例えば

 (a+bi)\overline{(a+bi)} = a^2+b^2 = r^2 = |a+bi|^2  

は複素数の計算にとても役に立ちます。

二つの複素数、p, q の除算は



  \frac{p}{q} = \frac{p\overline{q}} {q\overline{q}} 
              = \frac{p\overline{q}} {|q|^2}

 

と書き直すことができます。これは後で複素数の除算の解説で使いますので覚えておいてください。


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