「幾何学単位系」の版間の差分
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| − | 幾何学単位系は 重力定数、光速、クーロンの法則の係数 <math>\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}</math>が 無次元の 1   | + | 幾何学単位系は 重力定数、光速、クーロンの法則の係数 <math>\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}</math>が 無次元の 1 に( <math> \varepsilon_0=\frac{1}{4\pi} </math> に)なるように工夫された単位系です。  | 
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| + | <math>\varepsilon_0=1</math> とする流儀もありますが、それは随時補足します。  | ||
幾何学単位系では単位の中に 基本単位として距離の単位である m(メートル) しか出てきません。  | 幾何学単位系では単位の中に 基本単位として距離の単位である m(メートル) しか出てきません。  | ||
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ここでは、単位の次元を表す際、習慣に従って距離の単位 m は L と表記することとします。  | ここでは、単位の次元を表す際、習慣に従って距離の単位 m は L と表記することとします。  | ||
| − | 記号 <math>c</math>   | + | 記号 <math>c</math> はSI単位で表した光速 <math>299,792,458 m/s</math>  | 
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記号 <math>G</math> はSI単位で表した重力定数 <math>6.673 \times 10^{-11} m^3 kg^{-1} s^{-2}  </math>  | 記号 <math>G</math> はSI単位で表した重力定数 <math>6.673 \times 10^{-11} m^3 kg^{-1} s^{-2}  </math>  | ||
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記号 <math>\varepsilon_0</math>はSI単位で表した真空の誘電率<math>8.85418782\times10^{-12}m^{-3}kg^{-1}s^4A^2</math>  | 記号 <math>\varepsilon_0</math>はSI単位で表した真空の誘電率<math>8.85418782\times10^{-12}m^{-3}kg^{-1}s^4A^2</math>  | ||
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従って、質量はシュバルツシルト半径の半分になります。  | 従って、質量はシュバルツシルト半径の半分になります。  | ||
| + |  シュバルツシルト半径ではなく、その半分と定義していることに注意!  | ||
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SI単位系でのクーロンの法則は<math>F=\frac{1}{4\pi\varepsilon}\frac{q_1q_2}{r^2}</math> は幾何学単位系では <math>\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}=1</math> なので <math>F=\frac{1}{\varepsilon_r}\frac{q_1q_2}{r^2}</math> になりますが、力が無次元量なので電荷の単位は m になります。  | SI単位系でのクーロンの法則は<math>F=\frac{1}{4\pi\varepsilon}\frac{q_1q_2}{r^2}</math> は幾何学単位系では <math>\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}=1</math> なので <math>F=\frac{1}{\varepsilon_r}\frac{q_1q_2}{r^2}</math> になりますが、力が無次元量なので電荷の単位は m になります。  | ||
| − | 力が <math>\frac{G}{c^4}</math> 倍になり、<math>\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}=1</math> になることを考慮すると、電荷は <math>\frac{\sqrt{G}} {c^2  \sqrt{4\pi\varepsilon_0}}</math> 倍 になります。   | + | 力が <math>\frac{G}{c^4}</math> 倍になり、<math>\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}=1</math> になることを考慮すると、電荷は <math>\frac{\sqrt{G}} {c^2  \sqrt{4\pi\varepsilon_0}}</math> 倍 になります。    | 
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!SIからの換算係数!!SIへの換算係数!!次元  | !SIからの換算係数!!SIへの換算係数!!次元  | ||
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|style="text-align:center" |<math>\frac{\sqrt{G}} {c^2  \sqrt{4\pi\varepsilon_0}}=8.617\times10^{-18}</math> || style="text-align:center" |<math>\frac{c^2  \sqrt{4\pi\varepsilon_0}} {\sqrt{G}}=1.161\times10^{17}</math> || style="text-align:center" |<math>L</math>  | |style="text-align:center" |<math>\frac{\sqrt{G}} {c^2  \sqrt{4\pi\varepsilon_0}}=8.617\times10^{-18}</math> || style="text-align:center" |<math>\frac{c^2  \sqrt{4\pi\varepsilon_0}} {\sqrt{G}}=1.161\times10^{17}</math> || style="text-align:center" |<math>L</math>  | ||
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| + | <math>\varepsilon_0=1</math> の流儀では  | ||
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| + | !SIからの換算係数!!SIへの換算係数!!次元  | ||
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2016年11月9日 (水) 13:09時点における最新版
はじめに
物理や我々の生活の中で使われる単位系はSI単位系(MKSA単位系)が普通ですが、SI単位系は人間がその生活の中で決めた単位を含んでおり、 物理学に本来不要な換算係数を持ち込むという欠点があります。
ここで紹介する幾何学単位系は、相対性理論の成果を取り込み、相対性理論の式を非常に単純化する単位系です。
幾何単位系の特徴
幾何学単位系の特徴は、何といっても単位に m(メートル) しか出てこないことです。なんと、時間も質量も運動量もエネルギーも単位は m になり、他の単位も全て m を使って記述されます。
幾何学単位系の詳細
幾何学単位系は 重力定数、光速、クーロンの法則の係数 
が 無次元の 1 に( 
 に)なるように工夫された単位系です。
 とする流儀もありますが、それは随時補足します。
幾何学単位系では単位の中に 基本単位として距離の単位である m(メートル) しか出てきません。
ここでは、単位の次元を表す際、習慣に従って距離の単位 m は L と表記することとします。
記号 
 はSI単位で表した光速 
記号 
 はSI単位で表した重力定数 
記号 
はSI単位で表した真空の誘電率
を表すこととします。
長さ
SI と同じ m で表されます。何も変わりません。
| SIからの換算係数 | SIへの換算係数 | 次元 | 
|---|---|---|
   | 
   | 
 
 | 
時間
相対性理論の成果を取り入れ、時間と長さは同じ単位になるべきものと考えます。
幾何単位系では 1秒は、その時間での光の飛行距離、つまり 
 m とします。
| SIからの換算係数 | SIへの換算係数 | 次元 | 
|---|---|---|
   | 
   | 
 
 | 
質量
一般相対性理論の成果より、SI単位系での質量とシュバルツシルト半径との関係はSI単位系では
 
 | 
この式をそのまま幾何学単位系でも採用し、c=G=1 とすると
 
 | 
従って、質量はシュバルツシルト半径の半分になります。
シュバルツシルト半径ではなく、その半分と定義していることに注意!
| SIからの換算係数 | SIへの換算係数 | 次元 | 
|---|---|---|
   | 
   | 
 
 | 
速度
時間の単位が m になったので、時間は 
 倍になり、速度は 
倍になります。
つまり速度は無次元量になり、光速との比になります。
| SIからの換算係数 | SIへの換算係数 | 次元 | 
|---|---|---|
   | 
   | 
無 | 
加速度
時間の単位が m になったので、時間は 
 倍になり、加速度は 
倍になります。
| SIからの換算係数 | SIへの換算係数 | 次元 | 
|---|---|---|
   | 
   | 
 
 | 
力
 は幾何学単位系では 
 なので 
 になりますが、質量と長さがともに単位が m になるので力は無次元量になります。
質量は 
 倍になることを考慮すると、力は 
 倍 になります。 
| SIからの換算係数 | SIへの換算係数 | 次元 | 
|---|---|---|
   | 
   | 
無 | 
電荷
SI単位系でのクーロンの法則は
 は幾何学単位系では 
 なので 
 になりますが、力が無次元量なので電荷の単位は m になります。
力が 
 倍になり、
 になることを考慮すると、電荷は 
 倍 になります。 
| SIからの換算係数 | SIへの換算係数 | 次元 | 
|---|---|---|
   | 
   | 
 
 | 
 の流儀では
| SIからの換算係数 | SIへの換算係数 | 次元 | 
|---|---|---|
   | 
   | 
 
 |