「複素数とは?」の版間の差分

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(実数と複素数をどう見るべきか?)
(複素数としての実数)
 
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複素数をまっとうな数として受け入れるには少々発想の転換が必要です。
 
複素数をまっとうな数として受け入れるには少々発想の転換が必要です。
  
簡単に言ってしまえば、数は実は2次元ベクトルであって、実数もその仲間だったとということを受け入れてしまうのです。
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簡単に言ってしまえば、数は実は2次元ベクトルであって、実数もその仲間だったとということを受け入れてしまえばよいのです。
  
複素数は簡単に言ってしまえば独特の四則演算規則を備えた2次元ベクトルです。複素数を2次元ベクトル風に、'''実数'''を2つ並べて  <math>(a, b)</math> というように表せば、四則演算規則は
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複素数は簡単に言ってしまえば独特の四則演算規則を備えた2次元ベクトルです。複素数を2次元ベクトル風に、'''実数'''を2つ並べて  <math>(a, b)</math> というように表せば、四則演算規則は、<math>a, b, c,
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d</math>をすべて実数とすると
  
  
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'''2. 減算'''
 
'''2. 減算'''
 
{{eqnnn|<math>(a, b) - (c, d) = (a-c, b-d) </math>}}
 
{{eqnnn|<math>(a, b) - (c, d) = (a-c, b-d) </math>}}
'''3. 掛算'''
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'''3. 乗算'''
 
{{eqnnn|<math>(a, b) \times (c, d) = (ac-bd, ad+bc) </math>}}
 
{{eqnnn|<math>(a, b) \times (c, d) = (ac-bd, ad+bc) </math>}}
'''3. 割算'''
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'''3. 除算'''
 
{{eqnnn|<math>(a, b) \div (c, d) = \left(  \frac{ac+bd}{c^2+d^2},  \frac{bc-ad}{c^2+d^2} \right)  </math>}}
 
{{eqnnn|<math>(a, b) \div (c, d) = \left(  \frac{ac+bd}{c^2+d^2},  \frac{bc-ad}{c^2+d^2} \right)  </math>}}
  
となります。割り算がやけに複雑ですが、気にしないようにしましょう(^^;
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となります。乗算と除算がやけに複雑ですが、ここでは気にしないようにしましょう(^^; 後でその秘密を詳細に説明します。
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==複素数としての実数==
  
 
ここで、実数は2次元ベクトルの後ろのほうの数字が 0 の特別な場合、
 
ここで、実数は2次元ベクトルの後ろのほうの数字が 0 の特別な場合、
つまり <math> (p, 0) = p </math> (<math>p</math>は実数)  と定義すると
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つまり <math> (p, 0) = p </math> (<math>p</math>は実数)  と定義してみましょう。
 
<math> (p, 0) = p</math> (<math>p</math>は実数) ,  
 
<math> (p, 0) = p</math> (<math>p</math>は実数) ,  
 
<math> (q, 0) = q </math>(<math>q</math>は実数)  とすれば、上の計算式から
 
<math> (q, 0) = q </math>(<math>q</math>は実数)  とすれば、上の計算式から
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{{eqnnn|<math>(p, 0) \times (q, 0) = (pq, 0) = pq </math>}}
 
{{eqnnn|<math>(p, 0) \times (q, 0) = (pq, 0) = pq </math>}}
 
'''4. 割算'''
 
'''4. 割算'''
{{eqnnn|<math>(p, 0) \div (q, 0) = \left(  \frac{pq}{q^2},  \frac{0}{q^2} \right) = \left(  \frac{p}{q},  \frac{0}{q^2} \right) = \frac{p}{q} </math>}}
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{{eqnnn|<math>(p, 0) \div (q, 0) = \left(  \frac{pq}{q^2},  \frac{0}{q^2} \right) = \left(  \frac{p}{q},  0 \right) = \frac{p}{q} </math>}}
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となり、複素数としての実数では、四則演算の規則は全てそのままであることが分かります。つまり複素数演算は、
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実数の演算の2次元ベクトルへの拡張の一種といえます。
  
  
と実数での四則演算は全てそのまま成り立っていることが分かります。つまり複素数演算は、
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次ページ「[[複素数の四則演算の性質]]」へ
実数の演算を2次元ベクトルに拡張したものであり、
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複素数は実数の2次元ベクトルへの拡張の一種であることが分かります。
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2017年8月10日 (木) 15:49時点における最新版

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おかしな数 複素数

複素数はその最初の紹介のされ方が不気味なせいか、まっとうな数に思われていない節があります。確かに

 i \times i = -1  

という数 i(虚数) が有るなどといきなり言われても到底納得いかないでしょう。中には 複素数はまともな数学ではないとはなから受け入れない方もいます。確かに胡散臭いです。でも本当のところ 複素数は数学のみならず、理学や工学の世界でも幅広く使われている便利な道具であり、よく考えるとそれは 実数の自然な拡張でもあるのです。

実数と複素数をどう見るべきか?

複素数をまっとうな数として受け入れるには少々発想の転換が必要です。

簡単に言ってしまえば、数は実は2次元ベクトルであって、実数もその仲間だったとということを受け入れてしまえばよいのです。

複素数は簡単に言ってしまえば独特の四則演算規則を備えた2次元ベクトルです。複素数を2次元ベクトル風に、実数を2つ並べて (a, b) というように表せば、四則演算規則は、a, b, c,
 dをすべて実数とすると


1. 加算

(a, b) + (c, d) = (a+c, b+d)  

2. 減算

(a, b) - (c, d) = (a-c, b-d)  

3. 乗算

(a, b) \times (c, d) = (ac-bd, ad+bc)  

3. 除算

(a, b) \div (c, d) = \left(  \frac{ac+bd}{c^2+d^2},  \frac{bc-ad}{c^2+d^2} \right)   

となります。乗算と除算がやけに複雑ですが、ここでは気にしないようにしましょう(^^; 後でその秘密を詳細に説明します。

複素数としての実数

ここで、実数は2次元ベクトルの後ろのほうの数字が 0 の特別な場合、 つまり  (p, 0) = p (pは実数) と定義してみましょう。  (p, 0) = p (pは実数) ,  (q, 0) = q (qは実数) とすれば、上の計算式から

1. 加算

(p, 0) + (q, 0) = (p+q, 0) = p+q  

2. 減算

(p, 0) - (q, 0) = (p-q, 0) = p-q  

3. 掛算

(p, 0) \times (q, 0) = (pq, 0) = pq  

4. 割算

(p, 0) \div (q, 0) = \left(  \frac{pq}{q^2},  \frac{0}{q^2} \right) = \left(  \frac{p}{q},  0 \right) = \frac{p}{q}  


となり、複素数としての実数では、四則演算の規則は全てそのままであることが分かります。つまり複素数演算は、 実数の演算の2次元ベクトルへの拡張の一種といえます。


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