「回転行列と複素数の積」の版間の差分

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(複素数の積)
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複素数 <math>c1</math>、<math>c2</math> をその大きさ <math>r_1</math>、 <math>r_2</math> と偏角<math>\alpha</math>、<math>\beta</math> で表すと
 
複素数 <math>c1</math>、<math>c2</math> をその大きさ <math>r_1</math>、 <math>r_2</math> と偏角<math>\alpha</math>、<math>\beta</math> で表すと
  
{{eqn|<math> c_1 = r_1\cos\alpha + \mathrm{i}\cdot r_1\sin\alpha</math>|13}}
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{{eqn|<math> c_1 = r_1\cos\alpha + \mathrm{i}\cdot r_1\sin\alpha</math><math> c_2 = r_2\cos\beta + \mathrm{i}\cdot r_2\sin\beta</math>|13}}
 
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<math> c_2 = r_2\cos\beta + \mathrm{i}\cdot r_2\sin\beta</math>
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となります。ここで複素数の積 <math>c_1c_2</math>を計算してみましょう。
 
となります。ここで複素数の積 <math>c_1c_2</math>を計算してみましょう。

2014年12月28日 (日) 18:31時点における版

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初歩的な話で申し訳ありませんが、他の説明で使いたいので、ここではベクトルと複素数と2次元回転の関係の話を書き留めておきます。

回転行列

回転行列と複素数の積1.png

2次元座標で原点を中心にした回転は、簡単な行列で表現できます。回転行列と呼ばれます。さっそく導いてみましょう。

任意の点 {\boldsymbol r} = \left( \begin{array} {cc} x\\ y \end{array}\right) を、原点を中心に反時計回りに \beta 回転させてみましょう。回転後の座標を {\boldsymbol r'} = \left( \begin{array} {cc}x'\\ y' \end{array}\right) とし、{\boldsymbol r} の極座標での長さを r 偏角を \alpha とすると


 x = r\cos\alpha ( 1 )
 y = r\sin\alpha ( 2 )
 x' = r\cos(\alpha+\beta) ( 3 )
 y' = r\sin(\alpha+\beta) ( 4 )

(3)と(4)は角度の加法定理をあてはめると

 x' = r\cos\alpha\cos\beta-r\sin\alpha\sin\beta ( 5 )
 y' = r\sin\alpha\cos\beta+r\cos\alpha\sin\beta ( 6 )

これに、(1)と(2)を使うと

 x' = \cos\beta\cdot x-\sin\beta\cdot y ( 7 )
 y' = x\sin\beta\cdot x + \cos\beta\cdot y ( 8 )

これを行列を使って書き直せば

 \left( \begin{array} {cc}x'\\ y' \end{array}\right) = 
\left( \begin{array} {cc} \cos\beta & -sin\beta \\ \sin\beta& \ cos\beta \end{array}\right)
\left( \begin{array} {cc} x\\ y \end{array}\right) ( 9 )

これが2次元の回転行列と呼ばれるもので、{\boldsymbol r} = \left( \begin{array} {cc} x\\ y \end{array}\right)  を角度βだけ回転させ、{\boldsymbol r'} = \left( \begin{array} {cc}x'\\ y' \end{array}\right) に変換します。

この回転行列を2個掛け合わせたらどうなるのでしょうか?

 
\left( \begin{array} {cc} \cos\alpha & -\sin\alpha \\ \sin\alpha& \cos\alpha \end{array}\right)
\left( \begin{array} {cc} \cos\beta & -\sin\beta \\ \sin\beta& \cos\beta \end{array}\right) 
( 10 )

この行列はβの回転とαの回転を順次行うわけですから、α+βだけの回転になるはずで、これを回転行列で表現すると


\left( \begin{array} {cc} \cos(\alpha+\beta) & -\sin(\alpha+\beta) \\ \sin(\alpha+\beta)& \cos(\alpha+\beta) \end{array}\right)
( 11 )

となるはずです。(10) と (11) は一致するはずですが、(10) を計算すると


\left( \begin{array} {cc} 
\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta & 
-\sin\alpha\cos\beta-\cos\alpha\sin\beta \\ 
\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta & 
\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta 
\end{array}\right)
( 12 )

となり、(10)と(11)の関係は角度の加法定理と一致しています。

以上のように回転行列の積は回転角度の和に対応しており、角度の加法定理を覚えておけば回転行列は簡単に導けますし、回転行列を覚えておけば角度の加法定理を容易に導けます。

複素数の積

複素数の掛け算の演算規則は (a+\mathrm{i}\cdot b)(c+\mathrm{i}\cdot d)=ac-bd+\mathrm{i}\cdot (ad+bc) と単純ですが、 にもかかわらず幾何学的には「回転」と密接に関係しています。この関係が複素数の有用さの源泉になっています。その秘密をちょっと探ってみましょう。

複素数 c1c2 をその大きさ r_1r_2 と偏角\alpha\beta で表すと

 c_1 = r_1\cos\alpha + \mathrm{i}\cdot r_1\sin\alpha c_2 = r_2\cos\beta + \mathrm{i}\cdot r_2\sin\beta ( 13 )

となります。ここで複素数の積 c_1c_2を計算してみましょう。

{eqn| c_1c_2=r_1r_2(\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta) + \mathrm{i}\cdot r_1r_2(\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta)|14}}

この式に角度の加法定理を当てはめると

 c_1c_2=r_1r_2\cos(\alpha+\beta) + \mathrm{i}\cdot r_1r_2\sin(\alpha+\beta)
= r_1r_2(\cos(\alpha+\beta) + \mathrm{i}\cdot\sin(\alpha+\beta)) ( 15 )

以上から、複素数の掛け算とは、大きさを掛け、偏角を足す計算であることがわかります。 つまり複素数の掛け算の単純な規則を覚えておけば、角度の加法定理は簡単に導けるということです。


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