「回転行列と複素数の積」の版間の差分

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初歩的な話で申し訳ありませんませんが、他の説明で使いたいので、ここではベクトルと複素数と2次元回転の関係の話を書き留めておきます。
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初歩的な話で申し訳ありませんが、他の説明で使いたいので、ここではベクトルと複素数と2次元回転の関係の話を書き留めておきます。
  
 
==回転行列==
 
==回転行列==

2014年10月27日 (月) 13:32時点における版

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初歩的な話で申し訳ありませんが、他の説明で使いたいので、ここではベクトルと複素数と2次元回転の関係の話を書き留めておきます。

回転行列

回転行列と複素数の積1.png

2次元座標で原点を中心にした回転は、簡単な行列で表現できます。回転行列と呼ばれます。さっそく導いてみましょう。

任意の点 ${\bf r} = \left( \begin{array} {cc} x\\ y \end{array}\right) $ を、原点を中心に反時計回りに $\beta$ 回転させてみましょう。回転後の座標を ${\bf r'} = \left( \begin{array} {cc}x'\\ y' \end{array}\right)$ とし、${\bf r}$ の極座標での長さを $r$ 偏角を $\alpha$ とすると


$$ x = r\cos\alpha \label{rx} $$ $$ y = r\sin\alpha \label{ry} $$

$$ x' = r\cos(\alpha+\beta) \label{r'x} $$ $$ y' = r\sin(\alpha+\beta) \label{r'y} $$

\eqref{r'x} と \eqref{r'y} は角度の加法定理をあてはめると

$$ x' = r\cos\alpha\cos\beta-r\sin\alpha\sin\beta \label{r'x2} $$ $$ y' = r\sin\alpha\cos\beta+r\cos\alpha\sin\beta \label{r'y2} $$

これに、\eqref{rx} と \eqref{ry} を使うと

$$ x' = \cos\beta\cdot x-\sin\beta\cdot y \label{r'x3} $$ $$ y' = x\sin\beta\cdot x + \cos\beta\cdot y \label{r'y3} $$

これを行列を使って書き直せば

$$ \left( \begin{array} {cc}x'\\ y' \end{array}\right) = \left( \begin{array} {cc} \cos\beta & -sin\beta \\ \sin\beta& \ cos\beta \end{array}\right) \left( \begin{array} {cc} x\\ y \end{array}\right) \label{RotationMatrix} $$

これが2次元の回転行列と呼ばれるもので、${\bf r} = \left( \begin{array} {cc} x\\ y \end{array}\right) $ を角度βだけ回転させ、${\bf r'} = \left( \begin{array} {cc}x'\\ y' \end{array}\right)$ に変換します。

この回転行列を2個掛け合わせたらどうなるのでしょうか?

$$

\left( \begin{array} {cc} \cos\alpha & -\sin\alpha \\ \sin\alpha& \cos\alpha \end{array}\right) \left( \begin{array} {cc} \cos\beta & -\sin\beta \\ \sin\beta& \cos\beta \end{array}\right) \label{SeqRotationMatrix}

$$

この行列はβの回転とαの回転を順次行うわけですから、α+βだけの回転になるはずで、これを回転行列で表現すると

$$ \left( \begin{array} {cc} \cos(\alpha+\beta) & -\sin(\alpha+\beta) \\ \sin(\alpha+\beta)& \cos(\alpha+\beta) \end{array}\right) \label{AddRotation} $$

となるはずです。\eqref{SeqRotationMatrix} と \eqref{AddRotation} は一致するはずですが、\eqref{SeqRotationMatrix} を計算すると

$$ \left( \begin{array} {cc} \cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta & -\sin\alpha\cos\beta-\cos\alpha\sin\beta \\ \sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta & \cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta \end{array}\right) \label{AddRotation2} $$

となり、\eqref{AddRotation}と\eqref{AddRotation2}の関係は角度の加法定理と一致しています。

以上のように回転行列の積は回転角度の和に対応しており、角度の加法定理を覚えておけば回転行列は簡単に導けますし、回転行列を覚えておけば角度の加法定理を容易に導けます。

複素数の積

複素数の掛け算の演算規則は $(a+\mathrm{i}\cdot b)(c+\mathrm{i}\cdot d)=ac-bd+\mathrm{i}\cdot (ad+bc) $ と単純ですが、 にもかかわらず幾何学的には「回転」と密接に関係しています。この関係が複素数の有用さの源泉になっています。その秘密をちょっと探ってみましょう。

複素数 $c1$、$c2$ をその大きさ $r_1$、 $r_2$ と偏角$\alpha$、$\beta$ で表すと

$$ c_1 = r_1\cos\alpha + \mathrm{i}\cdot r_1\sin\alpha \label{c1} $$ $$ c_2 = r_2\cos\beta + \mathrm{i}\cdot r_2\sin\beta \label{c2} $$

となります。ここで複素数の積 $c_1c_2$を計算してみましょう。

$$ c_1c_2=r_1r_2(\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta) + \mathrm{i}\cdot r_1r_2(\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta) \label{ComplexProduct}$$

この式に角度の加法定理を当てはめると $$ c_1c_2=r_1r_2\cos(\alpha+\beta) + \mathrm{i}\cdot r_1r_2\sin(\alpha+\beta) = r_1r_2(\cos(\alpha+\beta) + \mathrm{i}\cdot\sin(\alpha+\beta)) \label{ComplexProduct2} $$

以上から、複素数の掛け算とは、大きさを掛け、偏角を足す計算であることがわかります。 つまり複素数の掛け算の単純な規則を覚えておけば、角度の加法定理は簡単に導けるということです。


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